EBウイルス感染症(伝染性単核球症)
EBウイルス感染症(伝染性単核球症)をご存知ですか?
日本では3歳頃までに60~70%が、成人までに90%~ほぼ100%の人が感染するといわれているほど一般的な病気です。
耳鼻咽喉科では初感染した20歳前後の若者が、高熱(39℃以上)とのどの強い痛み、くびのリンパ節の腫れを訴えて受診されることがあります。
この年代で感染すると症状が強く出ることが多く、熱とのどの痛み以外にも様々な症状が見られます。
これは「伝染性単核球症」と呼ばれる病気で、重症化することがあるので注意が必要です。
以前は20歳前後以上の患者さんにはあまり出会いませんでしたが、最近は30代の初感染患者さんも経験するようになりました。
EBウィルス感染症とは
原因ウィルス
エプスタイン・バール(EB)・ウイルスというヘルペスウイルスの一種がリンパ球に感染することが原因となる病気です。
潜伏期間は6週間から8週間と比較的長いとされています。
EBウィルスは他のヘルペスウイルスと同じように、一度感染すると体内から完全に排出されることはありません。
免疫がつくため再発することはほとんどありませんが、未感染の他の人へ感染させる可能性はあります。
症状
乳幼児や年長児が初感染した場合は無症状か、もしくは非常に軽い風邪のような症状で済むことがほとんどです。
しかし青年期以降に感染し、伝染性単核球症を発症した場合には極度の疲労感、39度以上の発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れなどが2~3週間以上続きます。
診察時に口腔内を観察すると、扁桃腺が真っ赤に腫れて、そこに白苔(白い苔のような膿)が沢山ついているのが特徴です。
普段の風邪とは違う、長く続く強い症状に驚いて受診されることが多いのです。
治療の流れ
小児の場合は無症状か軽い風邪症状で済むことがほとんどですのでゆっくり休養を取って、必要なら症状に合わせた投薬などで経過を見ます。
伝染性単核球症を起こしていて症状が強い場合、原因を確定するには血液検査が必要です。
38〜39℃以上の熱やリンパ節腫脹の他に、その他、眼瞼が腫れたり、発疹や関節痛を伴うこともあります。
ウイルスに対する特効薬は無く、原則として対症療法となります。
安静にして、症状に応じた薬を処方しますが、高熱と強いのどの痛みから脱水気味になっている患者さんも多く、当院では必要ならば点滴で水分や薬を補うことができる体制もとっています。
肝機能障害を起こすことがあるので血液検査の際にはAST・ALTの値も調べ、問題が起こっていないかも確認します。
特効薬が無いとは言え、基本的には予後の良い病気です。
EBウイルスは感染力が弱いこと、抗体を持っている人は唾液中にウイルスを排泄していることなどより、厳格な隔離の必要はありません。
慢性活動性EBウイルス感染症
特殊なEBウイルス感染症として慢性活動性EBウイルス感染症があります。
EBウイルスの異常増殖を伴い、発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、肝機能障害が3か月以上の長期間にわたって反復したり、持続したりします。
肝臓、心臓、肺、骨髄などに合併症を引き起こしたり、悪性リンパ腫を合併したりして予後の悪い経過をたどることがあります。
まとめ
EBウィルス感染症から伝染性単核球症を発症するケースは、新生活が始まる春に患者さんが増える傾向があります。
体調管理以外の予防は難しいのですが、首のリンパ節の腫れを伴う強いのどの痛み、39℃を超える高熱、扁桃腺につく白苔という症状がある時はすぐに受診されることをおすすめします。