百日咳のお話
百日咳は、名前に「百日」とつく通り、数週間から数ヶ月にわたって症状が続く場合があるため、早めの予防と適切な治療が大切です。
特に乳幼児や小さな子供に多く見られる感染症で、咳が長期間続くことが特徴です。
乳幼児の場合は重症化に注意が必要です。
今回は、そんな百日咳について詳しくお話しましょう。
百日咳の原因と感染経路
原因
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)という細菌が原因で起こる感染症です。
この細菌は気道の粘膜に付着し、毒素を放出することで気道に強い炎症を引き起こします。
乳幼児や小児がかかりやすいですが、大人にも感染することがあります。
特に、ワクチン接種が不完全な場合や免疫が低下していると、感染リスクが高まります。
感染力が非常に強いため、早期の診断と治療、そして予防接種が重要です。
感染経路
百日咳の感染経路は、飛沫感染と接触感染が主です。
感染者の咳やくしゃみを介して広がり、ウイルスが付着した物に触れた後、口や鼻を触ることで感染する場合もあります。
特に乳幼児やワクチンを未接種の人は感染しやすく、家庭や保育園、学校などで集団感染が発生することもあります。
百日咳の症状
百日咳の診断は採血かPCRによりますが、陽性が出にくく診断が難しいことがあります。
また、百日咳の潜伏期間は通常5日〜10日(最大3週間程度)で、発症した場合は次のような段階をたどります。
潜伏期間が長いので、感染拡大に気をつけないといけないね。
1. カタル期(初期)
✔ 軽い咳やくしゃみ、鼻水など風邪に似た症状が現れます。
✔ 発熱はあまり見られないか、あっても微熱程度です。
✔ この時期はまだ症状が軽いため、風邪と見分けがつきにくいですが、感染力が最も強い時期です。
2. 痙咳期(本格的な症状)
✔ 数週間にわたり激しい咳発作が続きます。
✔ 咳は連続して出て、息を吸い込む際に「ヒュー」という音がすることが特徴です(笛声)。
✔ 咳がひどくなると、嘔吐や顔が赤くなる、目の充血が見られる場合もあります。
✔ 乳児では、呼吸が一時的に止まる「無呼吸発作」を起こすこともあり、特に注意が必要です。
3. 回復期
✔ 咳の頻度が徐々に減少しますが、完全に治るまでに数週間かかることがあります。
✔ 咳は治ったように見えても、再び別の風邪をひいた際にぶり返すことがあります。
わー、長くて激しい咳・・・。
つらそうだなぁ。
早く治療を開始することがとても大切です。
百日咳の治療法
百日咳は、早期に適切な治療を受けることで症状の重症化を防ぐことができます。
抗菌薬での治療
百日咳菌に対して有効な抗菌薬(マクロライド系抗生物質)が使用されます。
✔ 初期のカタル期に治療を開始すれば、症状を軽減し、他者への感染も防ぐことができます。
✔ 痙咳期以降では、抗菌薬の効果は感染の拡大を防ぐ目的に限られます。
症状そのものにはあまり効果がありませんが、早期治療が重要です。
対症療法
✔ 痰が絡む咳を和らげるため、加湿器を使用して室内の空気を潤すことが効果的です。
✔ 水分補給をこまめに行い、気道の乾燥を防ぎます。
✔ 乳児の場合、無呼吸発作のリスクが高いため、入院して酸素吸入などの管理を行うことがあります。
百日咳の予防接種
百日咳は、予防接種を受けることで防ぐことができます。
また、感染を広げないための日常的な対策も大切です。
日本では、五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)として、百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヒブを一度に予防できるワクチンが接種されています。
五種混合ワクチン
【基本スケジュール(生後2か月から開始)】
✔ 初回接種
1回目:生後2か月
2回目:生後3か月
3回目:生後4か月
• 各回の間隔は通常20~56日(4~8週間)空けて行います。
✔ 追加接種
• 追加接種は3回目終了後、6~18か月後に行います。
(通常、1歳以降)
✔ 推奨
・このワクチンで得られた百日咳やポリオなどの免疫は小学校に入るころには下がってくることがあります。
下がりかけた抗体価を高く保つため、日本小児科学会では就学前(5歳以上、7歳未満)にこれらに対するワクチン(任意接種)をおすすめしています。
5種混合での5回目の接種はできませんが4種混合ワクチンで代用することが出来ます。
百日咳の感染予防
百日咳の予防には基本的な衛生対策が重要です。
✔ 手洗いやうがいをこまめに行う。
✔ 咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチで口を覆い、飛沫を広げないようにする。
✔ 感染が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、周囲への感染拡大を防ぎましょう。
まとめ
百日咳は大人にも注意が必要!
百日咳は子供だけの病気と思われがちですが、免疫が薄れた大人でも感染します。
大人の場合、症状が軽い風邪程度で済むことが多いですが、その分、気づかずに子供へ感染させてしまうことがあります。
家庭内で感染を広げないためにも、周囲の大人も予防接種や感染対策を心がけましょう。
百日咳は、早期に対応すれば重症化を防げる感染症です。
しかし、特に乳児や小さな子供の場合は呼吸器に負担がかかりやすく、無呼吸や肺炎といった重篤な症状に発展することがあります。
少しでも「いつもの咳と違う」と感じたら、すぐに医療機関を受診してください。
流行期には家族内で広がらないように、気をつけて過ごしましょう!
いつもと違う咳が始まったら注意が必要だね。