マイコプラズマ肺炎 ◆当院の検査方針について詳しくお話します◆
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌によって引き起こされる呼吸器感染症で、しつこい咳と発熱を特徴とし、風邪と間違われやすい感染症です。
主に子供から若年成人に多く見られ、寒い季節に保育園・幼稚園、学校や家庭内などの密集した場所で広がりやすい傾向があります。
今年は流行がニュースで報じられているせいか、心配される患者さんが多いよ。でもまだうちの医院では陽性患者さんは出ていないよ(2024.8.21現在)。
どんな症状が出たら検査が必要なの?
予防するにはどうしたらいいのかな?
マイコプラズマ肺炎について
まずはマイコプラズマ肺炎についてお話しします。
ネット上にたくさんの情報がありますので疾患については概要のお話に留め、ここでは当院の検査方針について詳しくお話します。
原因と予防法
マイコプラズマ肺炎は、感染した人が咳やくしゃみをすることで、病原菌が空気中に放出され、それを他の人が吸い込むことで感染します。
コロナ禍で有名になった「飛沫感染」だね!
タオルや食器の共有からうつる「接触感染」も起こると言われているから気をつけてね。
日常的な感染予防としてせっけんによる手洗い・うがいを徹底し、人混みに出るときにはマスクも活用しましょう。
感染力はそれほど強くなく、短時間の接触では感染しにくいと言われています。
しかし、濃厚接触を避けるためにタオルや食器の共有を避けることは大切です。
身の回りに発症した患者さんがいる時は、発症から一週間は感染力が強いとされているので特に注意しましょう。
主な症状
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2〜3週間と言われています。
症状としては
- しつこい咳:初期には乾いた咳が続き、次第に痰を伴う咳へと変わることがあります。
- 発熱:通常は37.5℃から39℃程度の発熱が見られます。
- のどの痛み:風邪のような症状として、喉の痛みが現れることがあります。
- 全身倦怠感:疲労感や倦怠感が続くことがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
これらの症状は風邪と似ているため、初期段階では風邪と間違えられることが多いよ。
症状やエピソードから、どんな検査が必要かを見極める判断をお医者さんにしてもらうことが必要だね。
治療
抗生物質療法・対象療法
マイコプラズマ肺炎の主な治療法は抗生物質の投与です。
- マクロライド系抗生物質が第一選択薬として使用されます。
- テトラサイクリン系やニューキノロン系抗生物質も効果があります。
近年マクロライド耐性菌が増加しているため、
効果がない場合は他の抗生物質に切り替えることがあります。
通常、抗生物質の内服期間は7〜14日間で、多くの場合、入院せずに外来治療で改善します。
症状を緩和するために一般的な咳止めや解熱鎮痛薬を用いた対症療法(症状を和らげる治療)も行います。
安静と経過観察
安静にして十分な休養をとることを心がけましょう。
一般的に、適切な治療を受ければ1週間程度で症状が改善し始めます。
基礎疾患のある方や高齢者は重症化のリスクがあるため、感染した際は注意が必要です。
症状が持続したり悪化したりする場合は、早めに医師に相談しましょう。
診断方法〜当院の検査方針について詳しくお話します〜
一般的に行われる検査方法
抗原検査
こちらはインフルエンザ検査の時に経験された方も多いのではないでしょうか。
喉の奥を綿棒でコチョコチョして検体を採取し、迅速キットを使って検査します。
結果は20分ほどでわかります。
マイコプラズマ抗原が検出されれば陽性と診断されますが、通常の迅速検査においては感染初期のまだ細菌数が少ない時期だと感染しているにも関わらず陰性となる可能性があります。
そのため、当院では通常の簡易検査ではなく、最新の迅速検査法であるデンシトメトリー分析装置(クイックチェイサーImmuno Reader)を用いています!
この装置では、検出感度を向上させ、少ない抗原量で、発症早期であっても検出することが可能です。
イムノクロマト法と写真現像技術を合わせた増幅反応により、検出感度を向上しています!
早く原因がはっきりわかると安心だし、
他の人にうつさないように気をつけられるから
正確な検査・診断は大切だね!
そうだね!
当院ではこの装置をインフルエンザやその他の疾患の検出にも使っているから、それにおいても効果的な早期治療が可能だよ!
PCR検査(LAMP法)
同じく喉の奥から検体を取りますが、こちらではマイコプラズマDNAが検出されるかどうかを検査するため、非常に正確な検査が可能です。
LAMP法によるマイコプラズマ核酸検出はM.pneumoniaeに特異的なDNAを直接検出する、高感度の遺伝子検査です。
マイコプラズマ肺炎では発症初期には病原体の気道粘膜への排出がピークに達し、数週間にわたって菌が排出されるため、LAMP法によるマイコプラズマ核酸検出は発症初期(2~16日目)から検出可能と報告されています。
検査結果は3日程でわかります。
その他
- 胸部X線:肺に炎症があるかどうかを確認することが必要な時に行われます。
- 血液検査:マイコプラズマ抗体の有無を調べるための血液検査が行われる場合があります。
◆当院の検査方針について詳しく◆
熱や咳で受診され、症状や流行状況からマイコプラズマ肺炎を疑う場合、また、患者さんがマイコプラズマ肺炎を強く心配されている場合は、まずは抗原検査をします。
クイックチェイサーでの検査では通常の迅速検査に比べると格段に検出能力が高いのですが、
マイコプラズマの抗原検査はそもそも一般的に偽陰性の頻度が高く、診断しにくい疾患と言えます。
クイックチェイサーを使用して陰性となっても、なお、注意が必要と判断する場合があるのです。
当院では、迅速検査で陰性の結果であっても、発症がごく初期の場合や、患者さんのエピソードや症状から感染の可能性が高いと判断する場合は、追加でPCR検査での確認を行う方針としています。
当院で疑いが強いと判断する患者さんの例は・・・
✔1〜2日間熱が出た後から咳がしつこく続いている
✔聴診で呼吸音に雑音が認められる
✔保育園や幼稚園、学校でマイコプラズマ肺炎が流行っている
✔コロナの検査が陰性である
✔咳ぜんそくが否定される
など・・・となります。
マイコプラズマ肺炎は特別に怖い病気ではありませんが、適切な検査で病名が確定すると早期に適切な治療が開始できます。
また、治癒過程が推測できることから保護者さんの安心感にも繋がります。
熱や咳で苦しむ我が子の病名が確定しないと、「もし怖い病気だったら・・」と親子で不安な夜を過ごすことになりますよね。
ぼくのママも病気の時には心配そうにずっとそばで看病してくれたよ(涙)
まとめ
マイコプラズマ肺炎は、特に子供や若年層に多く見られる疾患ですが、通常は過度なご心配の必要性は低く、適切な治療を受ければ大部分のケースで順調な回復が見込めます。
風邪のような症状が長引く場合や、強い咳がしつこく続く場合、強い倦怠感を感じる場合には、早めに医師の診察を受けることが重要です。
当院では個々の患者さんのエピソードや症状から注意深く必要な検査を検討し、施行することを大切にしています。
また、日常生活での予防策を講じることで、感染リスクを減らすことが可能です。
日々の体調に配慮し、もし症状が現れた場合は早めの受診を心がけましょう。