おたふく難聴

みなさん『おたふく難聴』という病気をご存知ですか?

これはおたふく風邪の重要な合併症の一つで、おたふく風邪にかかった後に生じることのある高度な難聴です。

多くは片方の耳だけに起こります。

そして残念なことに、ひとたび発症してしまうと有効な治療法がないのが現状です。

目次

おたふく風邪とは

ムンプスウイルスが体内に入ると耳下腺や顎下腺、舌下腺などがはれてきます。

高熱がでることもありますし、かかったことに気が付かないほど軽い場合もあります。

場合によってはウイルスが全身にまわり、髄膜炎や膵炎、睾丸炎、卵巣炎などを起こすこともあります。

妊婦がかかると流産することもあるので注意が必要です。

潜伏期間は2~3週間で、周囲の人にうつるのは耳下腺がはれる数日前から、はれが引くまで(おおよそ10日間)です。

おたふく風邪の合併症の一つである「高度難聴」

おたふく難聴は、おたふく風邪患者の0.1~1%にみられます。

年間700~2,300人の難聴が日本で発生していると推定されるのです。

これは決して低率ではありません。

片耳だけの難聴がほとんどで、もう一方の耳が聞こえることもあり、特に小さなお子さんの場合は難聴になっても周囲がすぐには気付けないことがあります。

また、大人になってから感染すると、難聴だけでなくめまいや耳鳴りを伴って日常生活に支障がでることがありますので一層深刻です。

おたふく難聴を発症するかどうかは、熱や腫れの程度や他の合併症を伴うかどうか等とは関連がありません。

感染したことに気付かない場合(不顕性感染)でもおたふく難聴になってしまうことがあるのです。

ひとたび難聴を発症した場合は現在の医療では治療法が無く、補聴器や人工内耳の装着を必要とします。

中学生以前の発症では言語獲得のために言語指導をうける必要もでてきます。

ワクチンによる予防が非常に重要となります。

ムンプスワクチンについて

おたふく風邪にはワクチンがあります。

現在、日本では任意接種ですが、多くの国では定期接種として行なわれています。

世界的にはワクチンの徹底により、おたふく風邪はすでにほぼ制圧された病気ですが、日本ではいまだにおたふく難聴患者が発生し続けています。

これは以前に用いられていたワクチンによる無菌性髄膜炎の発症率が高かったためです。

しかし、現在用いられているムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎の発症率は21465例のワクチン接種者のうち10例(0.05%)との報告とがあり、おたふく風邪自然感染者の髄膜炎発症率が1~10%ですから、現行のワクチンの副反応としての頻度は極めて低いと考えることができます。

また難聴の発症頻度についても、自然感染者の発症率が100~1000人に1人に対し、ワクチンによる発症率は100万~200万人に1人程度と報告されており極めて低率と判断できます。

ムンプスワクチン接種のすすめ

私は耳鼻科医の立場からワクチン接種によるおたふく風邪の予防の重要性を皆さんへお伝えしたいと思っています。

本来なら予防が出来たはずの高度難聴を発症してしまうのはとても残念なことです。

接種は計2回が推奨されています。

1回の接種だけでは予防効果は十分ではありません。

日本小児科学会は1回目を1歳になったら早い目に受け、2回目を小学校入学前の1年間に接種することを推奨しています。

当院での接種をご希望の場合は事前予約となりますので、ご希望の方はまずはお電話でワクチンの予約をしてください。

かかりつけの小児科の先生に定期接種スケジュールをご相談されている方は、ぜひその中にムンプスワクチンも計画してもらって下さいね。

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