おたふく難聴(ムンプス難聴)|症状・治療・予防

はーちゃん

先生、おたふく風邪って、ほっぺが腫れるだけの病気じゃないの?
「難聴になることがある」って聞いて、びっくりしたんだけど…。

なかい先生

そこは、耳鼻科医としてぜひ知ってほしいところなんだ。
おたふく風邪のあとに起こる『おたふく難聴(ムンプス難聴)』は、ひとたび起こると治す方法がない高度な難聴。
でも、ワクチンでリスクを下げられるんだよ。今日はそのことをくわしく話すね。

おたふく難聴(ムンプス難聴)は、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の重要な合併症のひとつで、おたふく風邪にかかったあとに生じることのある高度な難聴です。
多くは片方の耳だけに起こり、残念ながら、聴力の回復が難しく、確実に聴力を戻せる治療は確立していません。
この記事では、京都市中京区・御所南のなかい耳鼻咽喉科が、おたふく風邪とおたふく難聴の特徴、発症後に気をつけたいサイン、そしてワクチンによる予防について解説します。

目次

おたふく風邪とは

はーちゃん

おたふく風邪って、どんな病気?

なかい先生

ムンプスウイルスというウイルスが体に入ると、耳の下の「耳下腺」や、あごの下の「顎下腺」などが腫れる病気だよ。
高い熱が出ることもあれば、かかったことに気づかないほど軽い場合もある。
ウイルスが全身にまわって、髄膜炎・膵炎・睾丸炎・卵巣炎などを起こすこともあるんだ。

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の基本
✔ 原因:ムンプスウイルス
✔ 感染経路:飛沫感染・接触感染
✔ 潜伏期間:2〜3週間
✔ うつりやすい期間:耳下腺が腫れる1〜2日前から、腫れ始めて5日ごろまで
✔ 合併症:髄膜炎、膵炎、睾丸炎・卵巣炎(思春期以降)、そして難聴。妊婦さんがかかると流産のおそれがあります
✔ 登園・登校:学校保健安全法の第二種。耳下腺などの腫れが出てから5日間を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止
✔ 感染しても症状が出ない「不顕性感染」が約3割あります

おたふく難聴(ムンプス難聴)とは

はーちゃん

難聴になるのは、すごくめずらしいことなんでしょ?

なかい先生

それが、決して低い確率ではないんだ。
日本耳鼻咽喉科学会の全国調査では、2015〜2016年の2年間に少なくとも359人のおたふく難聴が報告されているんだよ。
これは当時の調査結果で、今の年間の患者数を表す数字ではないけれど、日本では本来なら防げたはずの難聴が起こっているんだ。

おたふく難聴の特徴
✔ ムンプスウイルスが内耳(音を感じる部分)を傷つけることで起こる感音難聴
✔ 片耳だけのことがほとんど。多くは高度〜重度の難聴で、ほぼ聞こえなくなる
✔ 耳下腺の腫れから数日〜2週間ほどのあいだに起こることが多い
✔ 熱や腫れの程度、ほかの合併症の有無とは関係なく起こる。感染に気づかない(不顕性感染)場合でも起こりうる
✔ 小さなお子さんでは、片耳が聞こえることもあり、周囲がすぐには気づけないことがある
✔ 大人がかかると、難聴にめまい・耳鳴りを伴い、日常生活への影響がいっそう深刻になる

はーちゃん

難聴になっちゃったら、治せないの…?

なかい先生

残念ながら、聴力の回復が難しく、確実に聴力を戻せる治療は確立していないんだ。
発症直後にステロイドなどの治療を試みることはあるけれど、回復はむずかしい。
そのあとは、聞こえの程度や片耳・両耳の状態に合わせて、補聴器や人工内耳などの支援を考える。
お子さんの場合は、年齢やことばの発達、園・学校での様子も含めて支援していくんだよ。

【重要】おたふく風邪のあと、こんなサインに注意

おたふく難聴は、本人(とくに小さなお子さん)が「聞こえない」と訴えないことも多く、気づかれないまま時間がたってしまうことがあります。
おたふく風邪にかかったら、腫れが引いたあとも2〜3週間は「聞こえ」に注意してください。

おたふく風邪のあと|聞こえの確認が必要なサイン

✔ 片側から呼びかけても気づかない、振り向く方向がいつも同じ
✔ 電話やイヤホンをいつも片方の耳で使いたがる
✔ テレビの音を大きくする、聞き返しが増えた
✔ 耳鳴り・耳が詰まった感じ・めまいを訴える(大人では多い)
✔ 腫れている最中〜腫れが引いたあとに、ふらつく・吐く
※ 気になるサインがあれば、すぐに聴力検査を。おたふく風邪のあとは、症状がなくても一度聞こえを確認しておくと安心です

ムンプスワクチンについて

はーちゃん

治せないなら、かからないようにするしかないんだね。

なかい先生

そのとおり。おたふく風邪にはワクチン(ムンプスワクチン)があるんだ。
ワクチンで感染・発症のリスクを下げることが、難聴などの合併症の予防につながるんだ。ただし、接種すれば絶対にかからないというわけではないよ。
日本ではまだ“任意接種”で、接種率が十分ではないんだよ。

はーちゃん

どうして日本では定期接種じゃないの?ワクチンは安全なの?

なかい先生

以前に使われていたワクチンで、副反応の無菌性髄膜炎が多かったことが理由のひとつなんだ。
今のワクチンでも副反応はゼロではないから、気になることは接種前に相談してね。

ムンプスワクチン接種のすすめ|2回接種が大切

なかい先生

耳鼻科医の立場から、ワクチンによるおたふく風邪の予防の大切さを、みなさんに伝えたいと思っているんだ。
本来なら予防できたはずの高度難聴を発症してしまうのは、本当に残念なことだからね。

接種のスケジュール(日本小児科学会の推奨)
✔ 接種は計2回。1回だけでは予防効果が十分ではありません
✔ 1回目:1歳になったら早めに(MRワクチンと同時接種できます)
✔ 2回目:小学校入学前の1年間(年長さんの間。MRワクチン2期と同時接種できます)
✔ 受け損ねた年長児・小学生以上・大人も接種できます。かかったことがはっきりしない大人(とくに医療・保育関係の方、妊娠を考えている女性)も接種が推奨されます

当院でのムンプスワクチン接種について

当院でのワクチン接種は事前予約制です。ご希望の方は、まずお電話(075-241-3387)でワクチンの予約をお取りください。
ムンプスワクチンは任意接種(自己負担)です。費用や、お住まいの自治体の助成の有無については受付にご確認ください。
かかりつけの小児科で定期接種のスケジュールをご相談されている方は、ぜひその中にムンプスワクチンも計画してもらってくださいね。

よくある質問(Q&A)

はーちゃん

ほかにも、よく聞かれることってある?

なかい先生

あるよ。まとめて答えるね。

1回だけ接種した子どもは、2回目を受けたほうがいいですか?

はい。1回の接種では免疫が十分につかない人や、年数とともに免疫が下がる人がいるため、2回目の接種をおすすめします。
小学校入学前の1年間が目安ですが、それを過ぎていても接種できます。

大人もムンプスワクチンを受けられますか?

受けられます。おたふく風邪にかかった記憶がない方、ワクチンを受けていない方は接種をおすすめします。
大人がかかると、難聴にめまい・耳鳴りを伴ったり、睾丸炎・卵巣炎を起こしたりと、症状が重くなりやすいためです。

妊娠中でも接種できますか?

ムンプスワクチンは生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。
妊娠の可能性がある方、妊娠を予定している方は、接種時期や接種後の注意点を事前にご相談ください。

ワクチンの副反応にはどんなものがありますか?

接種後2〜3週間ごろに、耳下腺が軽く腫れたり、微熱が出たりすることがあります。
まれに無菌性髄膜炎が報告されていますが、ほとんどは後遺症なく回復するとされています。気になることは接種前にご相談ください。

おたふく風邪にかかりました。難聴になっていないか調べられますか?

はい。聴力検査で確認できます。
小さなお子さんでも、年齢に合わせた方法で検査ができる医療機関をご紹介します。
おたふく風邪のあとに「片側から呼んでも気づかない」「耳鳴り・めまいがある」などのサインがあれば、早めに受診してください。

まとめ

なかい先生

おたふく難聴は、ひとたび起こると治せない、片耳の高度難聴。
でも、ワクチンを2回受けることでリスクを下げられる病気なんだ。
お子さんの将来の「聞こえ」を守るために、1歳と小学校入学前の2回接種を、ぜひ計画してあげてね。

はーちゃん

ぼくも2回ちゃんと受けたか、ママに聞いてみる!

・おたふく難聴は片耳の高度な感音難聴。全国調査では2015〜2016年の2年間に少なくとも359人(当時の調査結果)
・熱や腫れの程度とは関係なく、感染に気づかなくても起こりうる
・聴力の回復が難しい。聞こえの程度に合わせて補聴器・人工内耳などの支援を考える
・おたふく風邪のあと2〜3週間は聞こえのサインに注意。気になれば聴力検査を
・予防はムンプスワクチン2回(1歳・小学校入学前)。感染・発症のリスクを下げ、難聴などの合併症の予防につながる
・当院での接種は事前予約制(お電話で)。任意接種のため費用は受付へ

京都市中京区・御所南 丸太町駅でムンプスワクチン・お子さんの聞こえのご相談は

なかい耳鼻咽喉科(京都市中京区・御所南/地下鉄烏丸線「丸太町駅」近く)では、ムンプスワクチンの接種(事前予約制)と、おたふく風邪のあとの聴力検査を行っています。
ワクチンのご予約はお電話で承ります。お子さんの聞こえが気になるときは、お気軽にご相談ください。



ワクチンのご予約・お問い合わせ:075-241-3387

監修:なかい耳鼻咽喉科 院長 中井 茂(なかい しげる)
医学博士/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医/日本気管食道科学会 専門医/補聴器適合判定医師

参考文献:
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「ムンプス難聴 全国調査」(2015〜2016年)
・日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール
・厚生労働省「流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)」の情報、「学校において予防すべき感染症」

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