花粉症治療薬のお話
いよいよ花粉症の本格シーズンに突入です。
当院へも花粉症治療のために受診される患者さんが増えてきました。
花粉症の治療には内服薬、点鼻薬、注射薬など色々な薬剤があります。
それそれの薬には効果の強さや効き目の特徴があり、副作用も様々です。
今回はお薬の種類と特徴についてお話しましょう。
アレルギー性鼻炎の治療ガイドライン
当院では最新版の「鼻アレルギー診療ガイドライン」に準じた花粉症治療を行っています。
今年は第10版へと改定が行われました。
花粉症治療のトレンドを知ることができる動画ですのでぜひ御覧ください!
鼻アレルギー診療ガイドラインでは症状に応じて複数の治療薬の組み合わせを提示されています。
僕たち耳鼻咽喉科医は、症状の強さ、効果や副作用の程度、患者さんのご希望などを併せて考えながら薬剤を選択しています。
花粉症治療に使われる薬の種類
抗ヒスタミン薬
こちらは花粉症治療の中心になる薬です。
鼻症状で耳鼻咽喉科を受診したときに処方された経験がある方も多いでしょう。
また、花粉症の時だけではなく、風邪でつらい時に鼻症状を緩和するためにもしばしば処方されます。
抗ヒスタミン薬の特徴
花粉症は鼻の内に入ってきた花粉が引き金となり、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物資が放出されてアレルギー反応が起こります。
ヒスタミンに代表されるこれらの化学物質は神経を刺激してくしゃみを連続して起こしたり、鼻の内の粘膜を腫らしたり、鼻水を沢山分泌させて花粉症の症状が起こります。
抗ヒスタミン薬はこのヒスタミンの働きを抑えることで、これらの症状が起こらないようにする働きがあります。
しかしながら、抗ヒスタミン薬には眠気や判断力や学習能力を低下させる副作用があります。
ヒスタミンには脳内では覚醒や記憶・学習、運動を司る働きがあり、抗ヒスタミン薬が脳内に移行するとこれらの働きが低下することがあるからです。
また、口の渇きが強く出ることもあります。
最近の抗ヒスタミン薬は効果が現れるのが早く、飲み始めた日から効果を感じることができます。
たくさんの種類がありますがそれぞれに異なった効果や副作用を持っていますので、実際に内服した時の効果と快適な生活維持のバランスをご相談しながら、それぞれの患者さんに合う薬を一緒に選んでいきましょう。
効果や副作用の発現には個人差もあります。
患者さんの症状や要望から最適な薬をご提案しますので、お気軽にご相談下さい。
再診の時には実際に使用した印象などもお聞かせくださいね!
抗ヒスタミン薬の種類
抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代に分けられます。
第一世代は初期に作られた薬で効き目も強いのですが、眠気や口の渇きなどの副作用も強く出ます。
花粉症のピークの時期には強い効果に期待して頓服で使用することがあります。
第二世代の薬は第一世代の薬と比較して少し効果が弱いものの、副作用がかなり軽減されています。
現在はこの第二世代が治療の中心となっています。
この薬は効果の発現・持続が良く、副作用が少ないことから優れた薬です。
効果が強い薬の方が眠気などの副作用も強い印象がありますが、実際には個人差が大きく使ってみないと分からないこともよく経験します。
また、新しい薬が必ずしも古い薬よりも優れているわけではありません。
花粉症の症状、重症度は様々ですし、生活習慣や仕事の内容から求められる効果も異なります。
効果と副作用のバランスを考えて薬を選択することが重要ですね!
点鼻薬
点鼻ステロイド薬
点鼻ステロイド薬には鼻の中の粘膜に作用して花粉症を起こす炎症性物質の働きを抑える効果があります。
鼻水、鼻詰まり、くしゃみに効果が現れるのは1〜2日とされますが、毎日続けて使用することで効果が実感できる印象を持っています。
ステロイドには副作用が心配なイメージがありますが、点鼻ステロイド薬は体内への吸収が極めて少なく、全身的な副作用が少ない薬です。
点鼻用血管収縮薬
特に鼻づまりがひどいときに、少量使うことがあります。
当院では就寝前のみに使用など、使う場面を限定することをご提案しています。
長期間漫然と使用するとリバウンドで逆に鼻づまりが悪化するため注意が必要です。
抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンはヒスタミンと同様にアレルギー反応により放出される化学物質です。
花粉が鼻に入ると即座に反応を起こす原因がヒスタミンですが、ロイコトリエンは少し時間が経ってから現れる遅発型の症状を引き起こします。
ロイコトリエンは鼻の粘膜を膨張させて鼻詰まりを起こすのですが、この薬はロイコトリエンの働きを抑えて鼻詰まりを軽減させる効果があります。
また、ロイコトリエンには気管支を収縮させる働きがあるので、喘息やアレルギー性の咳を抑える効果も持っています。
ゾレア®
スギ花粉とスギ花粉に特定的なIgE抗体がマスト細胞に結合するとマスト細胞から大量にヒスタミンに代表される化学物質が放出(脱顆粒)されて花粉症症状が現れます。
ゾレア®はIgE抗体に結合してIgE抗体がマスト細胞に結合することを防ぎ、脱顆粒が起こらないように働きます。
前述した抗ヒスタミン剤を中心とした治療では効果が得られない重症患者さんにはゾレア®による注射療法で症状をコンロールし、生活の質を劇的に向上させることが期待できます。
しかし、その効果は注射したシーズンに限られます。
ゾレア®の対象となる重症患者さんはアレルギー体質の改善が期待できるスギ花粉舌下免疫療法も併せて考えてみてはいかがでしょうか。
詳しくは、ブログ:「スギ花粉症治療薬 ゾレア®」を御覧ください。
点眼薬
点眼用抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離阻害薬などがあります。
重症ではステロイド点眼を使用することがあります。
また、コンタクトレンズ使用中でも使える点眼薬もあります。
耳鼻咽喉科でも処方可能ですのでお気軽にご相談ください。
まとめ
このように花粉症の治療には様々な種類の薬があり、それぞれ効果と副作用に特徴があります。
症状や許容できる副作用を考慮してご自分に合ったベストの薬を選ぶには、我々耳鼻咽喉科専門医にご相談いただくのが近道です。
診察してみると花粉症だけではなく副鼻腔炎などの併発が見つかる場合もあるので注意が必要です。
副鼻腔炎などを併発している時は、花粉症治療薬のみではなかなか完治に至らず症状が長引いたり増悪する場合があります。
ただし比較的症状が軽く毎年ご自分に合う薬が決まっている方や、他の病気の合併のご心配は無い、とご自分で判断される方は「自己判断・10割自費で薬局購入」するという方法もあります。
その場合は、薬を間違った用法で漫然と使用することの弊害や合併症の見逃しに注意しつつ上手に利用しましょう。
メリットとデメリットのバランスを考慮して賢く使い分けましょう。