子どもの成長段階と症状の強さによる鼻治療の提案

子どもは誰でも鼻水、鼻づまり、それによるイビキなどの症状が起こりやすいものです。

そんなお子さんの様子をとても心配されるお母さんが多いので、少し長い目で見ながら気楽に考えていただきたくこの記事を作成しました。

小さなお子さんはまだ身体機能が未熟であり大人に比べると免疫力も低いため感染症にかかりやすいのが普通です。

鼻のサイズも小さく、少しの鼻水で簡単に詰まってしまいます。

それに加えて10歳頃までは扁桃腺も大きめです。

扁桃腺というとお口を開けた時に見える「口蓋扁桃」を思い浮かべますが、鼻とのどの境目あたりにも「アデノイド」という扁桃腺があります。

口蓋扁桃と同じように身体の外から入ってきたウィルスや細菌をやっつける働きをしています。

子どもはみんな口蓋扁桃もこのアデノイドも大きいのでたとえ鼻水が出ていなくても鼻が詰まり、いびきや口呼吸の原因になっているのが現状なのです。

しかし、小さいうちはどの子もある意味これが普通ですよ。

また、最近はアレルギー症状の低年齢化も進み、2〜3歳過ぎからの鼻アレルギー患者さんも珍しくありません。

小さなお子さんの鼻治療は特別な場合を除き「その時々の状態に合わせて投薬や処置を行いつつ成長を待つ」ということが中心となります。
悪い時は早めに受診、安定している時は一休み・・・受診が必要な時なのか、不要な時なのか、ドクターとコミュニケーションを取りながら対応できたら良いですね。

目次

赤ちゃんから未就学児(鼻水ダラダラ、ときどき中耳炎時代)

身体は元気だけど鼻水がダラダラ出ている時

このような時は鼻吸引処置と、症状の強さやご希望に応じて対症療法薬(症状を抑えて楽にするお薬)で対応します。

鼻の中に鼻水を溜め込んでいるとそこに細菌感染などが起こることがあります。

お家でこまめに鼻をかんだり耳鼻科で吸引処置をしましょう。

鼻の中をきれいにしておくことがお薬を飲むことよりもむしろ大切です!

黄色い粘性の鼻汁が出ている時

こんな時は感染をおこしているときです。

このような時は同時に咳や熱など体調を崩していることも多いでしょう。

この場合はごく短期間の抗菌剤を使用して細菌感染を制御します。

しかし、この状態は季節やその子が置かれている環境に影響され(保育園での集団生活など)しばしば繰り返し起こるものです。

このような鼻症状とのお付き合いの中で、時にはそれに起因する急性中耳炎滲出性中耳炎を起こすことがあるかもしれません。

そんな時には併せて耳の治療も行いましょう。

日常の対応は

残念ながら小さいお子さんの鼻症状は身体機能が未熟であることから起こることが多いので、なかなかスッキリと完治するものではありません。

重症化したり耳に影響が及んだりする前に受診して鼻汁を取って清潔にしたり短期間の薬を飲んだりと上手く対応しましょう。

あまり神経質にならずにおおらかに成長を見守りましょう。

小学生時代(もしかしてアレルギー?時代)

この年代になってくると身体も大きくなり免疫力も高まってきます。

感染による強い鼻症状が長期間続くということも減ってきて、急性中耳炎など、耳に影響が及ぶことも少なくなってくるでしょう。

しかし、次にクローズアップされるのは鼻アレルギーです。

鼻アレルギーの出現

お母さんがお子さんの様子を見ていて「これってもしかしてアレルギー?」と考え始めることが増えるのがこの年代です。

風邪を引いているわけではないのに鼻がぐずぐず、度重なるくしゃみも・・・

そんな時に耳鼻科を受診されるわけですが、まず初めの選択肢は「抗ヒスタミン剤の投与」となります。

この抗ヒスタミン剤は症状を抑えるためだけの効果ですので、症状の強い時だけ内服して辛い症状をやり過ごすためのお薬です。

花粉の季節に短期間だけ薬を飲めばやり過ごせる場合はその対応で充分でしょう。

舌下免疫療法

一方で、体質自体を変える根本的治療である「舌下免疫療法」は5歳から行えます。

毎シーズン辛い症状がある場合はこの治療を考えても良いかもしれません。

小学生くらいになると規則的なお薬の内服にも前向きに協力してくれるのではないでしょうか。

3年間ほどの治療期間は必要ですが将来に向けて体質改善したいという場合はお勧めします。

大人より子供の方がこの治療によって得られる効果は高く、また、現時点で影響を受けているアレルゲン以外の新規アレルゲンへの感作を予防できます。

ダニ舌下免疫療法に関しては将来の気管支喘息の発症を半数程度に抑えられると報告されています。

また、アレルギーがあると副鼻腔炎も起こしやすいので増悪時には早めに対応しましょう。

スギ花粉症治療薬「ゾレア®」

12歳以上になるとスギ花粉症治療薬「ゾレア®」も使えます。

「ゾレア®」は、アレルギー反応自体を抑える抗IgE抗体薬です。

個人差はありますが、ゾレア®で治療した多くの方は「花粉が飛散していない季節と同じ様な生活ができるようになった」と言われます。

ブログ:「スギ花粉症治療薬 ゾレア®」を御覧ください。

中学生・高校生(強い鼻症状が集中力に影響して困る時代)

この年代ではアレルギー症状が集中力に影響することを懸念される方が増えてきます。

スポーツを頑張るにも勉強を頑張るにもアレルギーが強いと不都合が多いですし、受験なども絡んできますので親御さんとしては非常に気になりますよね。

長時間野外で活動するアスリート系の学生さんもアレルギーがあると辛いものです。

この場合、中学生以上になるともう少し治療選択の範囲が広がります。

「鼻レーザー治療」がその一つです。

鼻の中の粘膜をレーザーの熱エネルギーで変性させることによって鼻づまりと鼻汁の改善が期待できます。

中学生以上が対象とは書いていますが、小さいお子さんは怖がることが多いかな?というだけのことですので本人にその気があればもう少し小さくても行えます。

過去には親御さんとご本人の希望で小学3年生のお子さんに治療したこともありますよ。

「舌下免疫療法」をコツコツと継続しながら、短期的には「鼻レーザー治療」や「ゾレア®」で対応する・・・こんな作戦が相談できるようになってくるのもこの年代です。

ブログ:「鼻レーザー治療の実際:なかい耳鼻咽喉科編」をご覧ください

18歳以上(もう大人に近づくお年頃)

いよいよ大人に近づいてお顔の骨も完成してきます。

こうなると、ここまで辛い鼻症状が継続している方の場合は外科的治療も選択肢に入ってきます。

「これまで色々な治療を行ってきたけれど一年を通して鼻症状が辛くて勉強や仕事、運動に支障が出る」という場合、鼻の中の形をととのえ鼻汁の分泌を抑制する手術を行うこともできます。

ここでは手術のお話もしていますが、小さな頃の鼻症状が直接、大人になってからの手術の必要性につながるということは無いので、心配しすぎる必要はありませんよ!

鼻症状の改善に非常に高い効果が期待できますが「手術」ですので患者さんにとってのハードルが高いのも事実です。

忙しい方は日帰り手術を選択する場合もありますが、時によっては帰宅後の出血に不安になることもあるでしょう(医療者ではない患者さんにとってはその出血が多いのか、問題無いのか、自分で判断するのが難しいため)。

そのため短期入院を計画して入院施設のある病院で安心して受けるのか、クリニックなどで日帰り手術を受けるのか、それぞれの患者さんのご事情と持病などのリスクに照らしてご相談することになります。

まとめ

このように小さい頃は誰でも鼻水や鼻づまりなどの問題を抱えがちです。

いつも完璧に鼻がスッキリしているお子さんはある意味珍しい位です。

もちろん、鼻症状が悪い時に放置して増悪してしまうと副鼻腔炎や中耳炎を引き起こす可能性があるので早めの対応が必要です。

しかし、日頃の鼻水や鼻づまりに関しては深刻にとらえて強い薬を漫然と使用し続けるよりも、メリハリをつけた対応を行いつつ、ある程度おおらかに成長を見守るのが良いと僕は考えています。

僕は、重症化しないように対応しつつなるべく個人の免疫力や体力で改善するように見守る方針です。
小さい頃は困ってたけど成長につれ問題なくなった・・ということはとてもよくある話ですよ!

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